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「じゃあまた、巡のクロッキー帳を全部、使い切ってやるんだから」
「おー。そうしてくれ。奏乃、おまえは絵を描いているときが一番、楽しそうだ」
昨日はもう、絵を二度と描きたくないとまで思ったのに、巡はそんなことを言ってくれる。
お礼を言いたかったけど、激しく照れくさくてなにも言えなくなる。
「昼を食べたら、どれにするか決めよう」
「……うん」
さー、飯だ! と言いながら巡はクロッキー帳をわたしに渡してきた。
ありがたく受け取り、胸に抱える。
巡は本当にいつも、こうやってさりげなくわたしを助けてくれる。
それがどうしてだなんて、そのときのわたしは考えも及ばなかった。
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