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そして二学期が始まった。
文化祭までまだ余裕があったので、わたしは出品用の作品に取りかかることにした。
苦手だと思っていた水彩画にチャレンジしてみて、意外に面白いことに気がついたわたしは出品作品も水彩画にすることにした。
やっぱり淡い色使いが苦手で、はっきりした色使いになってしまう。
絵柄もこの間の巡と土井先輩のやりとりしている場面になった。
試合前に肩を並べて笑顔で語り合っているところが印象的だったのでそこにした。
なんだか青春って絵柄になったけど、巡と青春って取り合わせがなんだかミスマッチでおかしくなってきた。
思わず、自分の描いている絵を見て、笑ってしまう。
「思い出し笑いをするヤツは」
「はいはい、エロくて結構!」
巡は自分の絵が終わったのか、わたしの様子を見に来ている。
「終わったの?」
「大体ね」
巡はわたしに隠れるようにして絵を描いていて、途中経過でさえ見せてくれない。
それなのに、わたしの絵はこうやってのぞきに来る。
なんだか不公平だ。
「巡、見せてよ」
「やだ。完成したらな」
完璧主義なところのある巡は、そういえばあまり、途中を見せてくれることがない。
デッサンの時は気を抜いているのかどうか知らないけど見せてくれるのに、本格的に絵を描き始めると、見せてくれない。
「おまえの色の塗り方、面白いよな」
どれくらい前から見ていたのか知らないけど、巡はそんなことを言う。
「面白いってなによ」
馬鹿にされたように感じて、むすっとした表情を向けたら笑われた。
「上手く言えないんだけど、色を塗ってるってよりは発掘してる感じ」
「……意味が分からない」
そんなこと、初めて言われた。
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