一*爽やかな季節の中、想いは募る

8/20
前へ
/249ページ
次へ
『痛くない、大丈夫?』  と優しく声を掛けてくれ、よく頑張ったなと優しく頭をなでてくれた。  わたしはもう、恥ずかしくて顔を上げられなくて、うつむいたまま、 『ありがとうございます、すみません』  と口の中でもごもごとお礼を告げた。  下を向いたわたしの視界にはその人の履いている上履きが見えた。  かなり薄汚れた色をしていたけど名前は読み取れて、「土井」と書いてあった。 『今のは残念だったけど、場を盛り上げてくれたから、キミが一位だよ』  と慰めなんだかどうだか分からない言葉を付け加えてくれた。  悔しい気持ちが大きかったけど、わたしはその一言にずいぶんと気持ちが楽になった。
/249ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加