177人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱり、一番に見に来たんだ」
巡に声を掛けられ、驚いて飛び上がる。
「どうだ?」
「──びっくりした」
「実物より美人だろ?」
そういって、巡はかぐや姫を指さす。
「これって」
「奏乃にモデルになってもらっただろう?」
ああ、それで下を向いて視線は前を見ろって──。
「ちょっと待って。今、すっごく失礼なことを言わなかった?」
「失礼ではないだろ。事実だ」
童顔なわたしがモデルとは思えないほど、かぐや姫は美人に描かれている。
反論出来ない。
わたしは無言でその場を離れた。
巡は当たり前のようについてくる。
ふと時計を見ると、一回目の喫茶室の時間だった。
「わたし、クラスの用事があるから!」
巡にそれだけ告げると、四階の教室に駆け上がる。
バックヤードに入り、自分の荷物を探し出してエプロンをつける。
カチューシャをつけることに躊躇しつつそっと表をのぞき見ると、給仕している女の子全員がつけていた。
お客さんもそこそこ入っていて、いいスタートを切っているようだ。
カチューシャをつけて、思い切って表に出る。
「じゃあ、交代、よろしくね」
戸惑いつつ、交代する。
最初のコメントを投稿しよう!