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喫茶室とは言っても、裏でやることは大したことではない。
最初は注文を受けたらコーヒー豆をひいて出そうと言っていたのだが、まず、それができる人が皆無だったこと、文化祭とはいえ、明らかな赤字は良くないということ、そして最大の問題は衛生面だった。
それに、人によって味が違うのも問題で、最終的には業務用の希釈しないタイプのアイスコーヒーとアイスティを紙コップに注いで出すということに落ち着いた。
それだけだと子どもが来たときに困るからと、りんごジュースも追加になった。
なので、喫茶室といいつつ、メニューは三つ。
注文を受けてバックヤードに通し、裏で紙コップに注いでわたしたちが出す、という流れになる。
シロップとミルクとレモンはバックヤードで管理している。
なので、わたしたちの仕事は楽なはずだったのだ。
しかし……。
わたしが交代で入った時は和やかな空気が流れていた。
クラシック音楽が流れる中、お客さんたちはのんびりとくつろいでいたのだ。
それがいつからか流れが変わってきて、妙に人が増えてきた。
校舎の最上階である四階の中途半端な位置の喫茶室だから人はそんなに来ないだろうと思っていたのだ。
それなのに、教室の外まで行列が出来るほどの混みようになってきた。
バックヤードにしまいこんでいた椅子を持ち出し、出来るだけ多くの人に入ってもらえるようにしたのだが、それでも次から次へと人がひっきりなしに訪れる。
笑顔がだんだんと引きつってくる。
一時間のノルマをこなした後、ぐったりと疲れてしまっていた。
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