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文化祭は、盛況すぎるうちに終わった。
なにが受けたのか分からないけど、わたしのクラスの喫茶室はずっと行列が出来る満員御礼状態だった。
結局、追加で二回ほど買い出しに出たほどだ。
お弁当を食べた後、わたしはノンストップで給仕係をする羽目になってしまった。
文化祭が終わった頃にはふらふらで巡の助けがなければ家に帰り着かないほどだった。
「おまえはほんと、我慢しすぎだろう」
と呆れている巡の言葉に、今回の件に関してはまったくだと同意するしかなかった。
自分の妙な不器用さに落ち込んでしまう。
「ま、なにはともあれ、お疲れさま。奏乃のあの絵もなかなか評判が良かったみたいだぞ」
すっかりそのことを忘れていた。
「あ、そうなんだ」
「あのな、もっと喜べよ」
「だって。巡の絵の方がすごかったから」
「んー。あれは横長ってだけでインパクトがあるから」
とは言うけれど、どれだけ大変だったかを知っている。
でも、巡は妙なところで謙遜をするのが分かっていたので、それ以上はなにも言わなかった。
「それじゃ、お疲れ」
「ありがと」
いつもならエントランスで別れるのに、今日はそれだと不安だからと玄関の前までついてきてくれた。
「あら、巡くん。わざわざごめんなさいね。お夕飯、食べていく?」
「あ、いえ。ありがたいですが、家で用意して待ってくれていると思うので……」
「そう? 残念ね。今度、食べに来てね」
「はい、喜んで」
普段の巡を知っているだけに、そのやりとりを不思議に思いながらわたしは家に入り、部屋に入る。
もう、今日はダメだ。
制服を脱ぐことも出来なくて、ベッドにうつぶせになるとわたしはそのまま眠ってしまった。
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