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「ダメだ」
「なんでっ」
「そんな子どもの遊びで賞をもらって、なにがうれしいんだ」
信じられなくて、息を飲む。
この絵画コンクールがどれだけ長い間続いていて、そこで賞をもらった人の中から何人かプロになったのか知らないからそんなことが言えるんだ。
説明しようとしたら、お父さんは興味がないと言わんばかりにわたしに背を向けて、テレビをつけた。
「お父さん!」
話を聞いてくれない。
なんのために頑張ってきたのか、分からない。
膨らんでいた気持ちが激しくしぼんで、萎えていく。
別にこの道で生計を立てて行けるとは思っていない。
好きだから一生懸命にやって、それで賞という形を残してなにがいけないというのだろう。
「奏乃……」
わたしよりもお母さんの方が泣きそうな表情をして、わたしを見ている。
「お母さんはついて行けないけど、交通費は出してあげるから」
お母さんはこっそりとわたしの耳に囁く。
「ダメだぞっ」
そんなところだけしっかり聞いていて、ダメという。
「あなた、どうして奏乃が一生懸命頑張ったことを褒めてあげないのっ」
「うるさい。絵が描けたところでなんになるんだっ」
お父さんは背を向けたまま、そんなことを言う。
「なにかに打ち込めるのは学生のうちだけなんですよ。それに奏乃は遊び半分でやってるわけではなくて、こうやってきちんと結果を出してるじゃないですか。褒めてあげるべきでしょう」
「そんな時間があるのなら、もっと勉強をしろ」
お父さんとお母さんは言い合いをはじめてしまった。
きっかけがわたしだっただけに、辛い。
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