六*授賞式

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 授賞式は滞りなく行われ、わたしは特別賞というものをいただいた。  金賞と銀賞を受賞した絵を見せてもらったけど、段違いの出来映えだった。  その絵を描いた二人とも少しだけ話をしたけど、絵を描くことにプライドを持っていて、それでいてきらきらと輝いていてまぶしかった。  篠原先生と巡は並んで部屋の端っこで見守ってくれていた。  二人は親しそうに笑いながらなにかを会話している。  それを見て、もしかして……なんて考えがよぎったけど、まさかと思ってすぐに否定した。  授賞式が終わったらお昼で、篠原先生がお祝いよ、他の人には内緒ねと言って、お昼ご飯をごちそうしてくれた。  篠原先生の話は面白くて、それに対して巡は容赦なくツッコミを入れるものだから、わたしは終始、笑いっぱなしだった。  お昼を食べて、篠原先生はもう少し用事があるからここでお別れだけど、と言いながら家までの交通費まで出してくれた。  賞状とトロフィーは荷物になるからと授賞式の後、すぐに宅配便で学校に送るようにしてくれた。  篠原先生になにからなにまでお世話になってしまった。  帰りは巡と二人きり。  一人だったら心細くて仕方がなかっただろうけど、巡がいてくれるだけでずいぶんと気持ちが違う。 「ほら、奏乃」  半歩前に立っている巡は少し振り返り、わたしに手を差し出してきた。 「……なに?」 「人が多いから、迷子になるだろ」 「だっ、大丈夫だよ! 子どもじゃな……きゃっ。ごっ、ごめんなさいっ」  大丈夫と言っている端から、人にぶつかってしまった。  ぶつかった人はむっとした表情をわたしに向け、無言で去って行った。 「ほら。またぶつかるぞ」  慣れない人混みに、素直に巡の手を握る。  持っていたサブバッグも持ってくれた。  思っている以上に大きくて温かい手。
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