六*授賞式

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「巡……ごめんね」 「なんだ、急に」  巡にはいつも、迷惑ばかり掛けている。  いつもお礼を言うタイミングを逃しているから、今までのことを含めて、口にした。 「巡に色々してもらってるのに、わたしは……」 「へー、そんなこと、気にしてたんだ」  横に並んで歩いている巡の視線を感じる。  わたしはうつむいたまま、足をすすめる。 「奏乃の描く絵が好きだから、もっとたくさん見たいんだよ」  好き、という単語にどきっとしたけど、それはわたしの描く絵に対しての言葉と知り、安堵した。  巡がわたしを好きなんて、あり得ない。 「巡の方が、上手だよ」  視線を上げて巡を見ると、複雑な表情をこちらに向けてきた。  それはなんと言えばいいのか分からない、表情。  困ったような、うれしいような、色んな感情が入り交じった表情。 「……上手いのは確かだ」  眉間にしわを寄せた表情をすると、巡は不敵な笑みを浮かべた。 「オレって天才だから、なんでもちょちょっと出来てしまうわけですよ」  巡の軽口に、だけどそれは事実だから否定は出来ない。  巡は勉強もスポーツも絵だってなんでも簡単に上手にこなしてしまう。  わたしは何事も一生懸命にやって、ようやく人並みだ。 「……あれ? ツッコミなし?」 「うん」  拍子抜けしたのか、巡はずっこける真似をした。  おかしくて、くすくすと笑う。
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