天に流るる音 ~十年前~

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   質問の意味を解りかねてぱちぱちと瞬きをした後、 「あぁ、荒神のことですか。今は紫杏ちゃんが手伝ってくれているので、いくぶんか楽になりましたよ」  紫杏とは、この神社に非常勤で働く神使いだ。  年齢は十五と若いが、宮本家と天城家は繋がりが深いので、こうして手伝ってもらっているのだ。  『剣』の神を使い、実力も申し分ない。あと十年もすれば東京で、いや、関東でも指折りの実力者となるだろう。  他にも近松家などにも縁が深いが、その子供は最近生まれたばかりである。  これで娘の疑問に答えたと思った天音だったが、空音はどうやら別の意味で言ったらしかった。 「そうじゃなくて、“どうして”ははうえはあの街をまもっているの?」 「!」  天音はようやくその意味を理解した。つまり、娘は「どうしてあの街を守る気があるのか」ということを問うているのだ。  基本的に天城の家は俗世とは切り離されている。関係がないのにも関わらずなぜ、そんな“親切”をするのか。  それは―― 「ふふっ。空音が大人になって、大切な人ができたらきっとわかりますよ」  天音は娘の頭に手を乗せると、軽く撫でてやる。  しかし視線は神社の――つまりは蓮次郎の方を向いていたので、また不機嫌になる空音であった。  
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