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* * *
異変は夕方になって起きた。
――おかしいですね……さっきから妙な感覚を“感じる”
天音は顔を曇らせる。
天城の家が代々持つ『感じる力』。その力がさっきからうずいてたまらない。
今夜あたりに荒神が出るのかもしれないが、しかしそれにしては異常な感覚だった。
――気を付けた方がよいかもしれませんね
思い、台所で洗い物をしている蓮次郎を訪ねる。
「蓮、今夜はいつでも『神世』が張れるように準備していてくれませんか?」
蓮次郎は水を止めると、すぐにこちらへ顔を向ける。
「出んのか?」
「ええ、でも今回はなんだか変な――」
その時だった。
今まで感じていた異常が、急激に増幅して、天音を襲った。
「ぁ……ぁ……!」
「おい、どうした天音!?」
膝を抱えてブルブル震える天音を、差し迫った表情で蓮次郎が支える。
――なんですか……この恐怖と不安と絶望を一緒にしたような感覚は……!
実際に目にしているわけではないのに、この重圧感。今まで感じたことはない。
ある一つの予感が天音の胸をよぎる。
――まさか……
それは神使い達において、最強最悪の敵。
――甲種荒神が蘇ったのですか……!?
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