天に流るる音 ~十年前~

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      *  *  *  異変は夕方になって起きた。  ――おかしいですね……さっきから妙な感覚を“感じる”  天音は顔を曇らせる。  天城の家が代々持つ『感じる力』。その力がさっきからうずいてたまらない。  今夜あたりに荒神が出るのかもしれないが、しかしそれにしては異常な感覚だった。  ――気を付けた方がよいかもしれませんね  思い、台所で洗い物をしている蓮次郎を訪ねる。 「蓮、今夜はいつでも『神世』が張れるように準備していてくれませんか?」  蓮次郎は水を止めると、すぐにこちらへ顔を向ける。 「出んのか?」 「ええ、でも今回はなんだか変な――」  その時だった。  今まで感じていた異常が、急激に増幅して、天音を襲った。 「ぁ……ぁ……!」 「おい、どうした天音!?」  膝を抱えてブルブル震える天音を、差し迫った表情で蓮次郎が支える。  ――なんですか……この恐怖と不安と絶望を一緒にしたような感覚は……!  実際に目にしているわけではないのに、この重圧感。今まで感じたことはない。  ある一つの予感が天音の胸をよぎる。  ――まさか……  それは神使い達において、最強最悪の敵。  ――甲種荒神が蘇ったのですか……!?  
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