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「おはお~」
「呑み込んでから喋れ」
夏休み、朝起きると母さんが口一杯に詰め込んで食べていた。机の上には山と積まれたオレンジ色の球体。
「説明が二度手間ね」
「うんオレンジだね。どしたのコレ?」
「おばあちゃんが送って来たのよ。甘酸っぱくて美味しいよ~」
それは別に良いけども、それにしても大量だ。つつけば崩れそうな程積まれている。
「でもうちだけじゃ食えんべ」
「容赦ないわよね~、母さん」
そう言って母さんはカラカラ笑った。おいおい。
「…もしかして俺起きるの待ってた?」
「聡ちゃん聡い~」
…悪い冗談だ。
「という事で配って来て~、書いといたから~」
テーブルにぐでっと乗りながら母さんはメモを渡してきた。書かれているのは普段お世話になっているご近所さんの名字。
気付けば持つのもイヤになりそうな大きさの袋にオレンジが詰められていた。
え~…。
「行ってきてよ~、母さん暑いの苦手なのよ~」
「息子にしっかり遺伝してるよ」
「行ってきてよ~、ほら最後のお家でクーラー貰えるよ~」
ん?
母さんの指差したメモに視線をつられて見下ろした。最後に書かれた名前は…。
…悪い冗談だ。
「行きゃ良いんだろ!!行きゃ!!」
「行ってら~」
テーブルでオレンジを食べながら手を振る母さんがどこまで知ってるのかを疑いながら、持つのもイヤな袋を仕方無く握った。
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