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ぴぃぃーんぽぉぉぉーん
電池の切れそうな音にすぐに扉が開いた。「聡介だー」
「おっすっす。それ何だ?」
「でっけー袋ー」
まだ小学校にも上がらない子供達がそれぞれの挨拶をしてきた。
ここはまだうちが見える位のご近所さん。3人の子供達の母親はまだ20代のアラサーだ。三つ子らしい。凄いな。
「何入ってんだ?」
「オレンジだよ。好きか?」
「「「普通ー」」」
最近の子供はシビアだな、おい。
「あら聡介君いらっしゃい」
すぐにこの子達のお母さんが奥からエプロンで手を拭きながら出て来た。
その容姿は“おばさん”と呼ぶには語弊が有るが、でも三児の母に向かってお姉さんと呼ぶのも微妙な所だ。
お陰でどんな対応をすれば良いのかいつも戸惑う。
「…どもっす」
結果、俺は無愛想な高校生の名を欲しいままにしている。
「あらオレンジ!有り難うね」
「…いえ」
「お礼しなくっちゃ。何か有ったかしら」
「お、お気遣い無く…」
「あ、そうだ。聡介君、朝はご飯の人?」
「え、は?いえ、特には…」
「なら良かった」
俺の枯れ果てた愛想など気にもせず、楽しげに奥様、…奥方、…お姉さん…?……は僕に明日の朝ご飯をくれた。
「特売!!って書いてあると買っちゃうのよねー」
「はぁ…、でもコーンフレークの特売って大して安くないんじゃ…」
「よく知ってるね。流石に現役学生は聡いわねー。帰ってから計算したら20円位しか変わらなくてね!もー逆に損しちゃった」
彼女は損した話を楽しそうに語らっていた。
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