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「む?妻の友達か?」
「あ、えーっと、正確には奥様の友達の息子と言いますか…」
3軒目はちょっと離れた集合住宅の少し大きな家だった。ただ、出てきたのは目当てのおばさんではなく旦那さんの方だった。
「今家内は買い物に行っている。30分もすれば戻って来ると思うが…」
こんな所で初対面した俺に、おじさんの方もどう接すれば良いのか分からないらしく白髪の隙間から汗が滴っていた。
「いえこれだけ渡して貰えれば」
すると渡した袋を覗いておじさんは怪訝そうな顔をした。
「…グレープフルーツか?」
「いえ、オレンジです」
「おっと失礼。果物はよく分からないのでな」
ここで流石にグレープフルーツとは間違わないのでは?と言う程チャレンジャーではない。
「食べ方はあいつが分かるかな。いや、わざわざ済まなかったね」
「…いえ。えっと、皮向いたらそのままで食べられますし、最悪搾っちゃえばオレンジジュースになりますから」
「ほう、君は聡いな」
あ、しまった。
自分で言われるような機会を作ってしまった。
「ふむ、折角暑い中来てくれたのにむなし手で帰らせる訳にもいかんな」
おや、またか。ここらの人達はお返し好きだな。
「アイスなら有るが持って行くか?」
「おぉ~」
思わず出てしまった喜びの声に、初めておじさんは嬉しそうな顔をした。
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