涙石

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涙石

煩わしい湿度は 肌の表面だけを撫でて 霞む網膜の裏 耳鳴りの止まない鼓膜の奥 鬱血する程に握り締めた腕 膝を丸めた両足を 冷えた血液が巡る 浅く繰り返す呼吸 雪が降る夢を見た 風を切る喉の音 ヒュウ、と まるで 木枯らしの様な 寒くて 寒くて 緩んだ口許が 自分でもわかる程に 酷く幸せで 泣いてしまいそう。
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