非日常が日常

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 背中を向けトーストを用意し始めると、加奈が点けたらしいテレビの音が室内に転がる。時間が時間なだけに内容は朝のニュースのようだ。  大して興味も無いのだろうが、退屈凌ぎに漫然と眺めている。ニュースは誘拐事件を取り上げている。小学生の女の子が誘拐され、身代金の受け渡し時に無事逮捕したという内容。やはり間が持たなかったのか、こっちに向き直った。 「お兄ちゃん、今日お休みだよね?」 「休みじゃなかったらこんなにのんびりしてないよ」 「じゃあ買い物行こう」  まだ返事をしていないのに、声を弾ませるあたり子供だな、と実感する。俺が断らないと解っているからなのだろうが。  そうこうしている内に、加奈の分のトーストが焼きあがった。先程と同じようにバターを落として、今度は皿に盛り付けて出してやる。 「サラダは?」 「いらなーい」  瑞々しい唇をいっぱいに開きトーストをかじっていく。目尻が下がり美味しそうに食べる姿を見ると、こっちまで幸福になってしまう。
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