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ようやっとここまでやってきた。タクシーが町に帰っていくのを見送ってから、少年は大きく息をついた。
ビルが立ち並び人であふれる町と違い、ここは緑に覆われ見えないところに獣がはびこっている。あまりにも今までと違う光景に再び溜息をつく。
どうしてこんな事になったのだろう。来てからまだ数分も経っていないのに少年はそう思った。地元の高校に進学するのが少年の目標であり希望だったのに、気がつけば遠く離れたこんな場所に来ている。
緑の中に突然現れたかのように、灰色の塀が横に伸びている。少年の前だけは高さ三メートルほどもありそうな鉄格子の戸になっていて、右の柱のようなところに「私立影焔(えいえん)学園」なんて書かれていた。
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