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耳鳴りかと思った酷いノイズが鳴り響いてる。
重い瞼を上げると、向こうでバスが横転しているのが解った。
どうやら車内から飛ばされてしまったらしい。
そのわりには無傷なのが不思議だ、骨の一つや二つ折れても仕方ない状況だったのに。
「く……。」
それでも体は気怠さを覚えているのか、起き上がると頭痛がした。
これはまずいかな、なんて思いながら周りを見渡す。
―枸杞が居ない
まさかまだバスの中に居るのだろうか。
横転したのだからガソリン漏れをしているかもしれない。
車内を探すのなら早くしなければ、そう思い駆け出した。
「く、こ…枸杞…枸杞っ!返事をしてっ!…枸杞っ!」
ひしゃげた窓からなんとかして入り込み、見渡す。
けれど、そこには誰も居ない。
壊れたラジオと、私のバック、そして枸杞がいつも持ち歩いている護身用のナイフが落ちていた。
まさかと思ったけれど、もしかしたら枸杞は誰かに連れ去られたのかもしれない。
その可能性にゾッとして、早く探さねばと考えたら咄嗟に体が動いた。
バックを持ち、ナイフとラジオを入れる。
(一応、ね。このラジオは誰かの落とし物かもしれないし、ナイフは枸杞を見付けたら渡さなきゃ…。)
そして私は這うように窓からバスを出た。
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