.01

3/3
前へ
/12ページ
次へ
  耳鳴りかと思った酷いノイズが鳴り響いてる。 重い瞼を上げると、向こうでバスが横転しているのが解った。 どうやら車内から飛ばされてしまったらしい。 そのわりには無傷なのが不思議だ、骨の一つや二つ折れても仕方ない状況だったのに。   「く……。」   それでも体は気怠さを覚えているのか、起き上がると頭痛がした。 これはまずいかな、なんて思いながら周りを見渡す。   ―枸杞が居ない   まさかまだバスの中に居るのだろうか。 横転したのだからガソリン漏れをしているかもしれない。 車内を探すのなら早くしなければ、そう思い駆け出した。   「く、こ…枸杞…枸杞っ!返事をしてっ!…枸杞っ!」   ひしゃげた窓からなんとかして入り込み、見渡す。 けれど、そこには誰も居ない。 壊れたラジオと、私のバック、そして枸杞がいつも持ち歩いている護身用のナイフが落ちていた。   まさかと思ったけれど、もしかしたら枸杞は誰かに連れ去られたのかもしれない。 その可能性にゾッとして、早く探さねばと考えたら咄嗟に体が動いた。   バックを持ち、ナイフとラジオを入れる。   (一応、ね。このラジオは誰かの落とし物かもしれないし、ナイフは枸杞を見付けたら渡さなきゃ…。)   そして私は這うように窓からバスを出た。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加