赤い溝 DRESS

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しかし炎に包まれてなお、化け物の体はまるで芋虫のようにうごめいている まだ死なないのか それならこうだ 「硬化、ランク10」 サッと描いた魔法陣を獣人の槍は受け取り、それを深々と化け物の胸へ突き刺したのだった 硬化の魔法陣、触れた者の体内に侵入し、細胞レベルで体を硬直させる恐ろしいものだ 狙い通り、化け物は石のように動かなくなった 我ながらこの魔法は反則並の強さだと思う しかし欠点があり、血のかよった生物にしか通用しないのだ 命持たざる者を相手にしている普段の仕事では、活躍の場は少ない 「ありがとうございます」 ずっと熊の後ろに隠れていたヤツが、恐る恐るといった感じで礼を言ってきた 「あー」 おざなりな返事しか出てこない 「あ、時間ないから」 男と獣人の横を通り過ぎてそのまま先に進む 時間がないのだ いちいちコイツの一言に構うヒマなど、私は作りたくなかった
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