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頼む。頼むから。もうこれ以上なにも望まない。
膝が壊れたみたいに震えるのが止まらなかった。
祈るために絡めた指はもう離れないくらいガチガチに固まってしまっている。
「はい。それでは、選んでください」
冷えた声が落雷みたいに響いた。
その声に体が大袈裟なまでに反応した。
これに勝たないと終わる。全てが終わってしまう。終わってしまうんだ。
汗で顔面が冷たい。洗顔したみたいに濡れているのに、まだまだ濡れているいく。
頼む。頼むから。
『ルージュ』を頼む。
「はい。回り終わりました」
頼むから頼むから頼むから。
冷えた声は淡々としていて次々と台詞を言っていく。
情緒もへったくれもない。
頼むから。お願いします。お願いします。お願いします。
勝たないと一千万円が。
いや。一千万円だけじゃない。
俺の……俺の俺の俺の俺の……
冷えた声の口元がスローモーションに見えた。
官能的で緩慢な動き。
『ルージュ』を。
その唇のような『ルージュ』を『ルージュ』と言ってくれ。『ルージュ』を!
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