村井時緒(18)

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「あるとかないとかじゃねえんだよ。こういう話で盛り上がることが大事なの。 わっかんねーかなあ?」 「わかんねえよ」 ため息をひとつ。 なんだかやる気が削がれてしまい、俺は教科書を閉じた。 小テストくらいどうにかなるだろう。 「あってもなくてもいいんだよ。 おもしろい話題があって、それで皆が盛り上がれて、本ができて、売れて。 噂ってそんなんだよ。 それでいいんだよ。 真面目にあるかないか考える必要ねーよ」 橋本は軽い男にみられがちだが、頭は悪くないんだろうなと思う。 妙に冷めてるというか、物事を客観視できる奴だ。 時々、何を言っているのかよくわからなくなるけど。 「橋本お。小テストだってのに余裕だなあ。本なんて読んで。10点満点とれよ」 「いや、それは無理っす」 チャイムの直前に、日本史の阿部先生が入ってくる。 阿部先生はいい先生なのだが、熱心すぎて時々面倒くさい。 「小テストだが、それは確実に積み重なって、成績表に現れるんだからなあ。 推薦を狙っている奴。内申は大事にしろよ。 それと、明後日からの中間テスト。 日本史は三日目だからって油断するなよ」 推薦とは大学の推薦入試。 三年生になってから色んな先生が受験に結びつけた話ばかりしてくるので、気が滅入る。
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