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そうだ……もう、三年生なんだ。
二年生の時にはあった空の席が、この教室にはない。
空の席はない。
「……」
「村井?どうした?」
回ってきたプリントを受け取らないので、橋本が振り返ってきた。
「なんでもねえよ」
プリントを受けとる。
名前の欄に、3年5組村井時緒と書く。
俺はもう二年生じゃない。
加代子はまだ二年生なのに。
************
おかしなことが起きたのはその日の夜だった。
テスト勉強をたっぷりして、さあ寝ようと目を閉じた瞬間、携帯電話が騒ぎだした。
驚いて悲鳴を上げそうになるのを堪えて、携帯電話の着信を止める。メールがきたみたいだった。
誰だ。こんな夜中に。と思ったのはほんの少しだけで、それよりも着信音が気になった。
俺はいつもバイブレーションだけの設定にしているのに、音が鳴っていた。
けたたましい音で。
これは、確かラデッキー行進曲だ。
運動会の入場などでかかる行進曲。
チャチャチャ
チャチャチャ
チャチャッチャー
チャララララッチャチャ。
なぜそんな着信音になっていたのかわからないが、多分友達か弟の仕業だろうと、気にするのはやめた。
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