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去り際、ロゼは女性の記憶を忘却魔法で消去した。
ランクZであるロゼの顔、名前を知った女性の身を案じてのことだ。
そして、ロゼ自身や周りの人たち、母親代わりのディーナに余計な迷惑をかけないがための仕方がない措置であり、何より始焉の翼の正体が漏れないための行為であるのだ。
仕事柄、世界最強のランクZ『始焉の翼』に恨みを持つ者も少なくない。
ロゼの正体がランクZ『始焉の翼』であることを知っているのは、ギルドマスターのディーナと楽園の規律のトップ五人『五皇』だけだ。
「さて、入国手続きも済んだことだし、早く総本部に行かないとね。
転移するから私に掴まって、ロゼ」
「わざわざ掴まんなくても、俺だって転移ぐらいできるよ? 母さん」
「んもぅ! こういう時ぐらい母親面させてちょうだいよ!」
ぷく~と頬を膨らませるディーナを可愛いな、などと思いつつ、ロゼは素直に頷いた。
「あ、そうそう。本部に着いたらあなたに重要な話があるからね。いい?」
「? わかった」
ディーナはロゼの返事に笑顔を見せると、
「転移!」
と唱えた。
声の残響を残し、二人の姿はその場から忽然と消えた。
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