28人が本棚に入れています
本棚に追加
なのに、この子は王族でありながら魔力がない。
「リズ。残念だが、この子に王位を継がせることはできん。
いや、この子はエスペランザ家にいることすら許されぬ」
「そんな……!
あなた! ロゼルクスは魔力がなくても、私とあなたの大切な子です!」
リズの両目にはたちまち涙が溢れ、頬を伝って布団へと落ちていく。
例え魔力がなくても、大切な私たちの子どもだと、ゼルスもそう思っていると信じていたから話したのに。
リズの胸は、一瞬で絶望で染まった。
「どうなさいました?」
そこへ、先ほどのゼルスの大声を聞きつけた執事のベルモンドが慌てて戻ってきた。
「ベルモンドか……。丁度いい、ロゼルクスから魔力が感じられないのだ。
魔力のない者に、王族たる資格はない。
この子を捨てなければならない」
「お、お待ちください! ゼルス様、ロゼルクス様はもしや覚醒型ではないでしょうか?」
ベルモンドのその言葉を聞いて、ゼルスは思い出したように声をあげた。
「覚醒型……、そうか! 覚醒型か!
私としたことが、すっかり失念していた!
何せ覚醒型が生まれる確率は、数百万分の一と言われているからな!」
そう言って高笑いするゼルス。
リズは、何のことか分からずに首を傾げた。
最初のコメントを投稿しよう!