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大陸の端に位置するエスペランザ王国。
大陸西方では、最も広い領土を保有する王国である。
そのエスペランザ王国へと入国する関門の前に、二人の男女がいた。
男は、黒いローブを着ており、女の方は白いローブを着ている。
「ここを抜ければ、いよいよエスペランザね」
「……何だってわざわざ俺までディーナ、いや母さんについてこなけりゃならないんだ?」
男、いや声色からして少年が不満そうな声をあげる。
「だって~、私一人じゃ寂しいじゃない?
それに、恋人とは離れたくないでしょ!」
「誰が恋人だ! 誰が!
自分の妄想ストーリーを現実世界に引っ張りだしてくるのは、いい加減止めてくれ」
「もう冗談だってばロゼ!
仕方ないじゃない? 私たちのギルド『楽園の規律』の総本部は、エスペランザにあるんだから」
ロゼと呼ばれた少年は、うんざりしたように溜め息を吐いた。
実際、ディーナの言うとおりであった。
ロゼとディーナの所属するギルド『楽園の規律』は、エスペランザの首都アルテルフに総本部を置き、各国に支部を持つ世界最大のギルドなのである。
ロゼたちもつい先日まで、隣国のヴァイマァール国の支部にいたくらいだ。
母さん……、ディーナのギルドマスター就任に伴って、総本部のあるエスペランザに、こうしてやってきた次第である。
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