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「今日の合コン頼むな! 八時にいつもの居酒屋だから遅れんなよ!」
「おう! 楽しみにしてるぜ!」
やたらめったらやる気満々の友人に合わせ、俺は意欲的な態度を装い返した。装ってはいても、それを感付かれることはないだろう。生半可な演技ではないので、他人に見破れるわけがない。
大学内の駐輪場で友人とは別れた。友人は余程楽しみらしく、バイクを法廷速度を破る速さで走らせて行った。
合コンの何が楽しいのか、俺には理解が出来ない。表面上はあくまでも期待に胸膨らませた雰囲気を漂わせつつ、心の中で呆れる。
あいつは十中八九俺を出汁に使ってこの合コンを開いたのだろう。
隣大学の子達と合コンするんだけど、可愛い子ばっかりだから慶太郎も来いよ!
あいつはそう言った。
来てくれという本心が容易に透けて見えた。大方俺が来ると言ってこぎ着けた合コンだろう。
面倒極まりなく、純粋に死ねばいいのにとは思うが、俺は決してそれを表には出さない。そんなものを出しては完璧な俺の像が壊れてしまう。
自分の完璧な像を守る為なら、いくらでも嘘をつきとうそう。ゲロを吐きそうなぐらい面倒でも、人付き合いを守る為に俺は行く。
行って、そこでも俺は完璧に過ごす。女に対する優しさは勿論のこと、冗談を言ってその場を盛り上げたり、独り身の男の手助けをしてやったりもしよう。
そうすれば皆俺のことを良い奴だと思い込む。心の底から馬鹿みたいに、疑うこともせずに勘違いしたまま思い込む。
山岸慶太郎は良い奴だ、と。
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