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不気味な朱色の絨毯。
魔王の胸辺りから蒼白い光が浮かび上がる。その光は魔王から離れ、高く、高く登っていく。天井まで到達した光はやがて形を変えボンヤリと光る魔方陣となった。
蒼く光る魔方陣を見つめ、魔王は死期を感じとったのか囁くように、
「サイス……今までお前には、色々と迷惑を掛けたな」
呟き。細くなった目で隣の男を見上げる。
「……魔王様」
「そのような顔をするな。……お前も分かっていただろう? 我が子が生まれれば、我の能力が無くなることぐらい」
魔王はやさしく。まるで子供をあやすかのようにサイスの頬に触れた。
「……頼めるか?」
その短い言葉には、どんな意味が込められているのだろうか。
サイスは二度頷き。濡れた顔で、
「必ずや」
力強く返事をした。
彼らの頭上。
蒼の魔方陣はいっそう煌めき。魔王の瞼が閉じられる頃には、その姿を完全に消していた。
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