第一章

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「……まあ、そうだよな。怒られるに決まってるか」  学生のゴールデンタイム。放課後に先生から呼び出された萩野祐希(ハギノ ユウキ)は若干鬱になっていた。  目の前には、たいして珍しくもないコンビニ。  快適な温度調整、明るい店内、笑顔の店員、少し高めの商品。真夏の暑い時期には思わず立ち寄ってしまうような悪魔の店だ。  貧乏学生である萩野は、そんなコンビニを見て渋い顔になる。  なにも彼はコンビニの商品が高いから、という理由だけでこんな顔になったりはしない。むしろいつもの彼なら涼しい顔をして通り過ぎていただろう。  しかし今日の萩野は、このコンビニの前で、あるレアな体験をしてしまったのだ。  そう、ちょうどこの辺り。このゴミ箱の前で。  朝、おいしくもなく、かといって不味いわけでもない朝飯を食べ、いつもどうりに登校。  コンビニの前で明らかに不良とわかるナリをした3人の男に、イヤよイヤよと絡まれている他校の女子生徒を見つけ。  本当にこんな事あるんだなー、と眺めていると。不良の1人と目が合ってしまったのだ。  もちろん萩野は慌てて目をそらしたのだが、残念なことに標的は萩野に代わっていた。
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