小賢しいやり方じゃあ

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「一人無視して挟み撃ちしてくるかと思っていたが違うみたいだな」 「うん、まあね」  じり、とタヌキが僕との距離を詰める。 「けど体格差も力量も違う。やっぱりお前らに勝ち目はないぜ?」 「…………」  そう、タヌキも肉厚な男も、今までの試合は全て相手の背中を地面につける――すなわちパワーによる勝利を収めてきた。 「ガキ、お前は二つミスをした。一つは真ん中に行かなかったこと。運動神経は良さそうだったから、まだ脚で勝てるチャンスがあった。なのに端に逃げ込んじまった。二つ目はでっかい方と肉を戦わせてしまったこと。肉厚な男は動きがトロイからな、お前が戦えば余裕だったのに。さっさと倒してでっかい方とお前で俺を挟み撃ち出来た。無理にでも戦う相手を変えるべきだったんだよ」 「それ冥土の土産にってやつ?」 「まあな。でっかい方は戦闘能力がゼロに等しい。俺がお前を倒すと同時に、肉厚な男があいつを倒すだろうよ!」  ガハガハと笑って、タヌキは腰を落とし両腕を広げる。 「終わりだぁ!」 ――ドスン!!  その瞬間、対角線先でキョウスケの声が聞こえた。 「ビバルディ!」
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