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「な、なんだとぉ! まさか肉厚な男が――」
タヌキが驚愕して後ろを振り返る。……だが
倒れているのはキョウスケだった。
「スキアリ」
タヌキは嵌められたと気付いて僕に顔を向けるが、遅い。僕はタヌキの視線をくぐるように、股の下を抜けてタヌキの背後をとっていた。
「しまっ……」
僕は右手でタヌキの背中に触った。
「――ビバルディ!」
タヌキ、撃破。
タヌキは膝から崩れ落ちたが、キッと、僕と、12m先で倒れているキョウスケを交互に睨んだ。
「審判! あのでっかいのはミスコールをした! 自分が倒されたのに『ビバルディ』と叫んだ! こいつら失格だ!!」
「いや、キョウスケはミスコールをしてないよ」
僕はタヌキに言う。
「何抜かしてやがる!」
「ハハハ、キョウスケは僕の名前を呼んだに過ぎない。ね?」
「そうだよー。呆気なくやられちゃったからさ、頑張れーって意味をこめて友人の名を呼んだんだ。岡本ビバルディの名をね」
起き上がらないままで、キョウスケはこちらに笑顔とVサインを見せた。
「な…………審判! これはありなのかよ!」
タヌキは激昂する。しかし。
「名前じゃ仕方ないね。ワラ」
「ちくしょおおおお!!」
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