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俺は溜め息しか出なかった。それは、自分の弱さを知ってしまったからだ。
腕っぷしよりも遥かに必要な精神的強さが俺にはまだ備わっていない。
《ブゥゥゥン》《ブゥゥゥン》
携帯電話のバイブレーションが鳴っているのに気付き、携帯電話を見ると圭太からの電話だった。
多分だが、怒りの電話だろう。俺は何を言われても反論出来ない立場だ。
「もしもし?」
『蓮次。俺の話を最後まで聞けよ?』
圭太は前置きは無しで、いきなり話し始めた。
「……何だ?」
『俺はお前が決めたのなら突き進めばいいと思う。だけどな、お前には帰ってこられる場所がある。仲間がいる。それだけは忘れるな』
「……あぁ。じゃあ、暫くは赤羽園の事は頼む。お前にしか頼めない事だからな」
『分かった。いつでも帰ってこい。それと茜がそっちに向かったから、ちゃんと話しとけ』
圭太には、いくら感謝しても足りないな。あいつは心の底から親友と言える奴だ。
「ありがとう。じゃあな」
『おう。またな』
俺が電話を切ると、タイミングを見計らったように息を切らした茜が膝に手を当てた格好で、こっちを見ていた。
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