“崩れた日常”

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茜は何も言わず俺に近寄ってきた。悲しいのか怒りなのか……表情から感情を読み取る事が出来なかった。 しかし、俺と茜の距離が近付くにつれて、分かった事がある。 茜は泣いていた。 そして、俺の目の前まで近寄ると同時に、俺の頬に衝撃が走り乾いた音が響いた。 「……ごめん」 「バカ……。もう会えないとか言わないでよ」 茜は俺の胸に顔を埋めて泣いている。昔も何かあれば、茜はこうして泣いていたな。 「ごめんな」 俺は茜の頭に手を当てて、もう一度謝った。 茜は俺の二度目の謝罪を聞くと、顔を上げ涙を拭いた。その顔には笑顔が見え俺は少しホッとした。 俺と茜は二人で並んでいるブランコに座り、真っ暗な夜空を見上げている。 曇っているせいか星は見えないが、月はボヤけながらも見る事が出来た。 沈黙が続いたが、茜が夜空を見上げながら話し掛けてきた。
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