“殺し屋デビュー”

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俺は隙だらけの谷本の顔面に拳を叩き込んだ。顎や頬ではなく、鼻を真正面から殴った。 谷本は後ろを吹っ飛ぶと、鼻を押さえている。鼻からは夥しい量の血が流れ、確実に折れただろう。 戦意を喪失させるには鼻を殴るのが一番だ。俺は倒れ込んでいる谷本に歩み寄った。 俺は威嚇の為にポケットからサバイバルナイフを取り出し谷本に向けた。 「大人しく捕まれよ。お前じゃ俺に勝てないって昨日で分かっただろ?」 谷本は俺の言葉に下を向きブツブツと呟いている。 何を言っているか分からなかったから聞き耳を立てた。 「………るな。……けるなよ」 語尾しか聞こえなかった為、さらに谷本へ近付くと発狂したように俺に向けて叫び始めた。 「ふざけるな、この糞餓鬼がぁあぁああ!!」 谷本は砂利を掴むと俺に投げつけた。最悪な事に砂利が目に入り視界を奪われた。 その隙に谷本はナイフを拾い俺に襲い掛かってくる。少し視界が回復し前を見ると谷本が目の前にいた。 俺は死を覚悟し谷本へ体当たりをした。 《ブスッ》 「…………っ!?」 温かい何かを俺の肌で感じとった。それは間違いなく血液だ。 しかし、俺に痛みは無かった。それもそのはずだ…それは俺の血ではなく谷本の血だった。 俺のサバイバルナイフが谷本の腹に深々と刺さっている。 俺は慌ててサバイバルナイフを手放し谷本から距離をとった。
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