ビターミルク

♂１♀

「あ、佐伯さん。おはよ～。」

あゆみと目が合うとにこりと微笑んで挨拶された。

「う、うん。おはよう。」

なぜかどもってしまう。

モデルのようにスラッと伸びた手足に小さな顔。

フワフワの巻き髪にぱっちりした目。

私なんかとは似ても似つかないお姫様。

確かに彼女に雑用なんか頼めないわ。

私はため息をつくと仕事にとりかかった。

「おはよう。」

低い声が室内に響いた。

部屋の空気がピリッと引き締まる。

来た来た高科主任。

一応宮田課長がこの注文住宅プランニング課の責任者ではあるけれど、事実上のトップは彼だ。

高科亨。

入社6年目、28歳ながら営業成績はダントツ。

主任の役職があてがわれているが、権限は部長クラスで、彼がこの部署を統括していることにみんなもう慣れていた。