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「良いですか、愛しのマイシスター。この世に聖人君子など一握り。他は外道か阿呆か―――もしくは性人位のものなのです。」
と、彼女の姉はうだりながらこう言った。
例え床の上にうだりながらでも敬愛する姉の言葉である。
(嗚呼、世間はなんと恐ろしいところなのだろう。)
と心の底から脅えた。
壁に隠れてふるふると震える妹に姉は妖しい笑みを浮かべながら続ける。
「そんな生き馬の目を抜いて更にはその穴に豚の目を詰め込むような荒波を、私達か弱き乙女が渡るための方法を授けましょう。」
さあ、拳を握りなさい。
姉の言う通りに妹は握り拳を作る。それを見た姉は声を上げて嘆いた。
「ああ、あぁ、それではいけません。淑女足るものそのように堅く握ってはいけません。優しく、このように握るのです。」
「親指を他の指でくるむように……?姉様、このような握りでは力を入れられません。」
「そう、それで良いのです。これは『ともだちパンチ』と言います。昨日、古本屋に行って読んだ書籍に書いてありました。」
余談だが、“古本屋”の単語の前に“ハロワに行くのが面倒くさくて”と言う一文が入る。
(流石姉様、勉強熱心でいらっしゃる。)
一方、妹は今時確実にいないくらい純真だった。
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