地下の国のアリス

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嗚呼、かくも姉は計算高きもの! 全国の姉妹の間でこのような血で血を洗う権謀術数が行われているのは想像に難くない事態であろう。 ただ、姉唯一にして最大の誤算は―――― 妹がグラップラーとして万年に一人の逸材であったと言うこと! 「えっ?」 凄まじい風切り音と共に妹の拳が姉の腹に突き刺さり、そして―――― ――――姉は入院した。 全治6ヶ月。 『ともだちパンチじゃなけりゃマジヤバかった』とは主治医の弁である。 同日、妹は失踪した。 実の姉に重傷を負わせたのがショックだったのだろう。 そして姉を除けば唯一の家族であった父が心労で倒れ、亡くなってしまってからと言うもの、彼女の行方を案じる者は居らず。 少女の存在を覚えている者は安物靴の底の如くあっと言う間に減っていったのである。 それから2年後―――。
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