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「明日は雨か…」
「虹予報は正確だからきっと雨だろうね」
俺は情報屋折原臨也
ソファーの上で伸びているのは斑鳩揚羽イカルガアゲハ
俺と同じ情報屋だ
「明日で期限切れるけどまだしばらく居ても良い?」
「大歓迎だよ」
「ありがとー」
まぁ正確に言えば、彼女は情報屋だけでなく、運び屋から殺し屋まで何でもこなす本当に何でもありの何でも屋
「臨也なんか飲む?」
「コーヒー頂戴」
「ん」
斑鳩揚羽と言うのも本名ではない
彼女が名乗っている偽名の一つだ
本名は浦原虹ウラハラコウ
一般人には式裂日月シキザキカゲツ
そして情報屋としては招霊木オガタマと名乗っている
「あ、ねぇ臨也」
「なんだい?」
「明日はちょっと居なくなるからね」
「本職?」
「どっちかってーと本家がらみかなぁ……」
「御愁傷様」
ソファーに延びていた理由が解った俺は心底同情した
「因みにお仕事内容は?」
「最近山から下りてきた妖怪さんの住処探し」
「それはまた面倒な」
「面倒どこの話じゃないよ」
「確かにね」
「只の人間だったらこんな面倒なことしなくてすむのになぁ…」
妖怪だの只の人間だったらだのさっきから言っているがこれは比喩でもなんでもない
彼女はセルティと同じ人あらざるものだ
彼女自身は俺たち人間と変わらない姿をしているが、その中に流れている血は妖怪と人間の血が混ざりあっているらしい
彼女が幾つもの偽名を名乗っているのもそれが原因である
彼女の寿命は俺達より長い
そして彼女の成長は俺が聞いた話だと14歳で止まってしまっているらしい
事実――俺が彼女に初めて出会ったのは中学生の時の事だが、彼女の見た目は会った頃となんら変わっていない
俺だけが時を刻んでいく
だけれども
「はい、出来たよー」
「どうも」
「私もう寝るね」
「ん、お休み」
「おやすみなさい」
彼女は、俺が今まで観察してきたどんな人間よりもずっと人間らしいのだ
了
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