Ⅲ,しがらみ

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『虹、来ていたのか』 「セルティ久し振り~」 黒いスーツの左そでだけがごっそりとなくなっている奇妙な服装 肌を覆う真っ白な包帯 かろうじて形を保っていると言った様子の左腕に、ないはずの眉根が寄った気がした 「あ、これ?うっかりプレスしちゃったの」 『私が言えた義理じゃないが、体は大事にしろよ?』 にっこりと笑ってうなずく虹 「うっかりで左腕潰してたら世話ないね、粉骨砕身と働くのはいいけど、本当に肉や骨粉々にしちゃだめだよ、虹」 『新羅、居たのか』 「お帰りセルティ」 「新羅、何か上着貸してくれない?」 「もう行くのかい?」 『もっと休んでいったらどうだ』 「そうしたいのは山々なんだけど、まだお仕事残ってるから行かなきゃ」 立ち上がった虹 本当に粉々になっているらしい だらりと垂れ下がった左腕 『その腕で、どうするつもりだ』 「喧嘩しにいくんじゃないよ。報告」 『送る』 「臨也んとこだよ?」 『…………』 思わず沈黙を打ち込んだ 「依頼人じゃなくて仲介者が臨也なんだよ」 『……依頼人は誰なんだ?果てしなく嫌な予感しかしないんだがな、私は』 「守秘義務によりノーコメントでお願い致します」 大袈裟な仕草で恭しく頭を下げる 「そう言えば臨也の奴、元気なの?」 「昨日シズちゃんと喧嘩してたよ~」 『あぁ、真っ昼間から自販機が飛んでると思ったら臨也か』 思わずそう打ち込む 「あいつバカだから」 クスクスと笑う虹に、影で作った上着とヘルメットを渡す 『行こう。臨也が心配してるぞ』 「うん、メール来てた」 …本当にこの二人の関係はよく解らない *
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