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「やぁ運び屋。久し振り」
虹が臨也のマンションに消えたその5分後
「虹に危険な仕事仲介したことを怒ってるのかい?」
もしかしたら降りて来るかもしれないと待っていたのだが、さっさと帰れば良かった
「言っておくけど、今回の仕事を虹に仲介するように言ったのは依頼人だよ」
『依頼人は誰なんだ』
「入江慎悟」
あっさりと奴はそう言った
「虹の立場を守るためらしいよ。本当かどうかは知らないけどね」
『虹の立場?』
「そう」
それ以上喋るつもりはないらしい
何だかんだ言いながら虹のこととなると口が固くなる
「彼女には明確な後ろ楯なんてないに等しい。それでも自由に立ち回っていられるのは何故だと思う?」
『知るか。敢えて言うならそれが虹だからだろう』
「確かにそれもあるだろうけどさ、一番の理由は彼女が怖いからだよ」
『は?』
_・・・・・・
「怖いからだよ。彼女がね」
僅に目を伏せて臨也は告げる
「一度でも彼女の狂気を目にしたなら……いや、彼女に睨まれたなら…わかると思うね。俺は」
『あるのか?』
「あるよ。あれは確かに鬼だった」
『……鬼』
「彼女は確かに人外さ。血筋じゃなくて、生き様そのものがね」
あんなに人間らしいのに、と臨也
『だったらあいつを危ない目に遭わせるな』
「無理だよ。そんなことしたら死んじゃうじゃない」
果てしなく矛盾しているようで、何処までも正しい言葉
[血の跡が目立たないから]
そんな理由だけで黒い服を好んで着ているような娘だ
「俺とシズちゃんの喧嘩を笑いながら見るんだよ?虹は」
『………』
「闘争と混沌、彼女が望んでるのはそれだけだよ」
『他人を求める以上、それだけなんてことはありえないだろう』
「他人が居なきゃ闘争も混沌も産まれないよ」
『お前が虹に執着する理由は解らない。だけどな、虹は』
「俺を他人と定義していない」
『あれだけ他人他人連呼しているのにか?』
「それについては俺と彼女の事だから話さないよ」
『……とにかく、あんまり虹を危ない目に遭わせてばかりいると静雄に洗いざらい話すぞ』
「シズちゃんは虹に負い目があるからね」
『一体何の話だ』
臨也はにっこり笑って答えない
『もういい。戻れ』
そう告げても臨也は動かない
「後5分。ここで待って戻ったら虹は寝てる」
『本当にお前達の関係はよく解らんな』
そう告げればたった一言
「他人だよ?」
笑って返された
――本当に腹立たしい男だ
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