18人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あーあ、また無防備に」
寝室を覗けば、俺のワイシャツを袖だけ通して布団の上に丸くなっている猫―――もとい、虹が居た
熟睡しているのか、布団の中へと押し込んでもぴくりとも反応しなかった
ベッドに腰掛けて頭を撫でていると、髪の隙間から左のうなじに見覚えの有りすぎる傷痕が覗いた
「まだ消えないんだね」
僅かに隆起した肉を人差し指で辿る
うなじから背中へと消えていくこれは彼女が俺と出会ったときに負ったもの
「ん……」
俺の指から逃れる様に、
彼女が寝返りをうつ
仰向けになった、その体には、無数の傷痕
一番酷いのは右脇腹から左胸の下までの刀傷
けれど俺の目を引くの別の傷痕だ
豊かに膨らんだ双丘の中央
ちょうど心臓の位置
長さで言えばたかだか5cm程の小さな傷痕
そう、ちょうど小降りなナイフ程の大きさだ
「………」
こんな小さな傷痕に
・・
俺達は縛られている
「おやすみ、虹」
Fin.
最初のコメントを投稿しよう!