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パソコンを立ち上げれば、すぐに求めていた資料が表れた。
「今回のホシは、とある大物政治家の別荘にある『花園の雫(かえんのしずく)』と言われる宝石だ。セキュリティレベルは5――別荘とは名ばかりの、厳重な一つの金庫だな」
映し出されたのは少々造りが豪奢な二階建てのログハウス。
一見見ると普通のログハウスなのだが、恐らく施されてる鍵などは二重、三重と厳重な作りになっているだろう。
「この別荘は…確か先日国会で騒がれてた久遠先生のですね」
「さすがオリ。その通りだ」
「期限はあるんですか?」
画面を睨んでいたシンが眉間にシワを寄せたまま生田に問う。
頷いた生田は、指を四本立てて見せた。
「4日、ですか」
「先方の要望は2日だったんだがな、さすがにセキュリティレベルから見て2日は厳しい。それでギリギリの日数を提示してもらった」
確かに2日ではかなり厳しい。
だが、先方の要望が2日ならなるべくそれに応えたくもある。
ツキは僅かに目を閉じ、トントンと米神を叩いた。
物事を考えるときの彼女の癖だ。
「…シン、今回は私が接触役になるわ」
「力を使うのか」
「その方が手っ取り早いでしょ?あまりしたくはないけど、ね」
肩を竦めて見せたツキに、シンは小さな声で「すまない」と告げた。
今回の指令で、尚且つ迅速に事を済ませるにはどうしても彼女の能力に頼らざるを得ない。
すなわち、それだけ彼女に負担をかけると言うことになるのだ。
個人の能力差とはいえ、こう言うときは自分の力量不足に歯痒さを感じた。
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