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「…そうか、そんなに俺を怒らせたいか。なら二人とも、明日の仕事の情報収集を二人でしてこい」
「えーっ!?それって横暴!職権濫用だよっ」
「そもそも、ツキがいないのにどうやって情報収集すればいいんだ。今回の仕事は厳重警備された建物の中にあるんだろう?鍵の在処やパスワードを聞き出すのは容易じゃないんだぞ。PK能力者の僕らには不向きだ」
「よくわかってるじゃないか。だが俺を怒らせるから悪いんだろう?」
鼻を鳴らし、シンがそっぽを向く。
そんなやりとりにツキはくすくすと笑い声を立てた。
「もういいじゃない、シン。あなただって念力全般出来るけど、ESPは苦手でしょ?」
「ツキ」
「さぁ、戻りましょう。任務の資料は来てるの?」
ぱちんと片目を瞑れば、シンがやれやれと首を振った。
彼女の二人に対する甘さは今に始まったことではないが…それにしても甘過ぎる。
「だからいつまで経っても図に乗るんだ」
「何よー、シンってばヤキモチ?」
明るい栗色の髪を肩の上で揺らし、イチが意地悪げに口の端を歪めた。
通り過ぎ様、コツリと頭を小突く。
「そんなんじゃない」
「嘘だぁ」
「イーチ、これ以上連帯責任を負わせられるのはゴメンだよ?」
オリはにこりと笑いながら釘を刺す。
シンとは長い付き合いだからか、オリはシンの扱いを心得ている。
…たまに加減を間違えてとばっちりを食らうこともあるが。
「随分と長い演説だったなぁ」
「隊長」
部屋に戻ると、窓際に置かれた大きな椅子に腰掛けた人物が声を掛けてきた。
特殊部署、第一特殊部隊長の生田 健だ。
ロスタリア設立当初から所属し、上層部からも一目置かれているらしく、役付けの中では一番若い。
「隊長、今度から代表挨拶はシンを指名してください。そうすればこんなに長くなることはないと思います」
「シンにか?そりゃぁ無理だろ」
「うわー、隊長にまで言い切られたよ。リーダー面目丸潰れなんじゃない?」
隣を見上げれば、ジロリと睨まれる。
「そんなことより、そろそろミーティング始めるぞ。資料はパソコンに送ってあるから確認してくれ」
生田の言葉で全員か自分のデスクに座った。
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