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「そんな、こと知らなかったし…」
しょぼーん
「変に落ち込んでいないで、早く会いに行って手遅れにならないうちに辺銀を元に戻してくれないかな。相当弱っているはずだから。」
なんだか雅記を見直した。
辺銀にあんなにひどい仕打ちを受けていながら、
こんなに真摯に辺銀のことを見つめてるなんて。
お前は電柱よりずっとえらいぞ。
「うん。電柱以上、人間以下ってこかな。」
肩に手が置かれる。
?
「そんなこと言ってないで行ってきなさいよ。僕と爺先生の苦労を水の泡にしないで。」
そしてあろうことか、診察室から私を蹴りだしやがった。
うむ。前言撤回。
なんて憎々しいやつなんだろう。
きっと雅記は腐っても医者なんだ。
人間としての部分が腐り落ちていても
かろうじて人間の部位として医者という最後の砦が彼の中にあるだけなのだ。
そんなこと、一人で考えていたのだが、
看護師の視線と患者の視線に耐えきれず私は逃げた。
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