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爺先生の病院に行くと、真っ先に診察室に通された。
しかしそれは爺先生の診察室じゃなく、
雅記が担当している診察室。
因みに私の担当医は爺先生。
順番待ちしている患者さんの視線攻撃に耐えながらも、診察室へ。
今日はやけに私に視線で攻撃する人が多い。
別に私自身が痛いことしているんじゃないのに。
寧ろ今日は普通なほう。
「待ってたよー。美空さん。」
人に待ち望まれていたなんて恥ずかしいな。
「辺銀君はどうしてるの?」
「え?雅記知らないの。」
「知らないよー!君から預かった鍵を渡して以来会ってくれないんだもん。」
「私、辺銀とあってない。」
かれこれ一か月。
「だと思ってたけどね。だって、『先生から鍵取り返してきて。』なんてこと辺銀が言うってことは、何かあったとしか思えないもん。で、何があったのか説明してもらおうか。」
「んー。説明するよりもこっち読んで。そうすりゃわかる。」
「お!生原稿。やっぱり初めては僕に見せたかったのね。」
胸がムカムカする。
でも、雅記がその紙をめくる度に、お茶らけた表情は薄くなっていった。
まるで、中年親父の抜け毛のように。
最後のページをめくった時、私は彼の真顔を初めて見た。
「これ、マジですか。」
「大マジっす。」
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