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「やあ、升橋」
こんな風に僕の名前を呼んでくれる人なんて、もう何年も―――
「はい?」
教室の隅、今は体育の授業中。バスケットなんて僕には辛すぎるので仮病でサボったんだった。
そして今、僕に話しかけてきたのは。
「ちょっといいかな?」
「……平田先生」
平田和美先生。底抜けに明るい声音の彼女は生徒指導の教諭。なぜ、どうしてどんな理由で僕に話しかけたんだろう。
「名前覚えてくれてんだ。嬉しいね。升橋羊介、だよね、たしか」
「まあ……はい」
「いーっつも一人でいるからさ。ちょっと気になってね。皆と遊んだりしないの?」
独りがデフォですから。ていうかそんなこと言われる義理もないわけですが。
「まあ……」
「もしかしてさあ……失礼かもだけど、友達、少ないとか?」
失礼です。果てしなく失礼です。事実ですけど。限りなく事実ですけど。
「…………」
「ならさ、放課後、生徒指導室来てくれる?」
「え」
「頼んだよー」
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