桜舞う頃に

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「僕の事を知っていた最後の一人にお別れを言いに行ってたんだ。僕の名前を呼んでくれる人はもう居ない。」  歪んだ唇が紅い月を描く。 「君は僕と違って桜を咲かせ続けるという確固たる目的を持って存在している。僕と似て全く異なるからこそ僕は君の事が好きなんだよ。」  いつもと同じ戯言だと思った。「嫌いだ。」とでも言えば良かったのだろう。だけど言う気にはなれなかった。  此の日は何かが違った。
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