1人が本棚に入れています
本棚に追加
『主は?』
其れの問い掛けを無視して名前を尋ねる。
『僕は僕だよ。其れ以上でも其れ以下でも無い。』
フフと意味有り気に笑う。
『君の名前は何て言うの?』
『妾に名は無い。』
嫌な眼だ。見えない眼が視えないものまでも全て見通す。
『じゃあ僕が付けてあげようか?』
『いらぬ。名など何の意味も無い。』
『ふーん。じゃあさ、此の下に居る人の名前は?』
そう言って其れは自分の足元を指差す。
桜の樹の根元を。
最初のコメントを投稿しよう!