桜舞う頃に

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『主は?』  其れの問い掛けを無視して名前を尋ねる。 『僕は僕だよ。其れ以上でも其れ以下でも無い。』  フフと意味有り気に笑う。 『君の名前は何て言うの?』 『妾に名は無い。』  嫌な眼だ。見えない眼が視えないものまでも全て見通す。 『じゃあ僕が付けてあげようか?』 『いらぬ。名など何の意味も無い。』 『ふーん。じゃあさ、此の下に居る人の名前は?』  そう言って其れは自分の足元を指差す。  桜の樹の根元を。
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