プロローグ

5/6
前へ
/46ページ
次へ
思わず立ち上がり叫んだ渉。それに驚いた里菜は肩を震わせた。 「……次は」 呟いて、渉は里菜の方を見た。 見られた里菜は、もう泣く数秒前といった感じで渉を見つめていた。 「うぅぅ……食べなくてはいけませんか?」 上目づかいでそんなことを言われると、男なら誰だってうろたえてしまう。 「え、と……」 目の前で犠牲者が三人も出ているところを目の当たりにした。 これ以上増やしていいのだろうか? そんな疑問が渉の中に浮かび上がる。 里菜は鍋と渉の顔を交互に見続け、そしてゴクリと生唾を飲み込んだ。 その時の顔は、何かを決意したような顔だった。 「……里菜?」 パクリ。 里菜は箸で食材を掴み、口の中に放り込んだ。 「んぅ……くぅぅ」 そして、里菜は目を回し、倒れてしまう。 「な……」 今、目の前で起こった一瞬の出来事を見て、渉は 「くそーー!!」 鍋の中に箸を突っ込み、勢いで口に入れる。 二三回噛んだ後、それを飲み込んで、例のごとくその場に倒れる。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加