【第三章 一か月後の校舎】

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【第三章 一か月後の校舎】

放課後、生徒が一人もいなくなった 教室の後ろでわたしは一人、佇んでいた。   部活動が熱心でないうちの学校は 授業が終わると生徒はさっさといなくなってしまう。 校庭からは どんな運動部の掛け声も聞こえないし、 吹奏楽部の演奏が流れてくることもない。 少し前に席替えがあって わたしの席は出席番号が早いにも関わらず、 最後尾の端っこにあった。 視力も特に悪くなかったので 不都合は特になく、居眠りしたり、 窓の外をよそ見したりしていても 先生に咎められることのない絶好のスポットだった。 その席の上に今は小さな花瓶が載っていて、 白い小ぶりな菊が活けてある。 水はかえられていないのか少し淀んでいた。 いじめ行為の一環ではなく、 本当に死者を悼む為に置かれたものだ。 「本当にわたし死んでるんだ……」 自分の死がわたしの主観だけでなく、 第三者にも認識されたような気分だった。
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