【第三章 一か月後の校舎】

2/6
前へ
/16ページ
次へ
広げた自分の手の平を見る。 青ざめてもなく、 普通の生きている人間と同じに見えるのに。 この花瓶も机も近いうちに 片付けられるだろう。 わたしが死んでしまった事を、 わたしがいたこと自体をなくしてしまうように。 「変わっていくんだね、わたしは死んだの……ううん、殺されたのに」 懐かしい気持ちで教室を眺める。 日頃、 見ていなかった黒板横の掲示板まで。 学校行事予定表も 清掃予定表も別の紙に変化していた。 カレンダーも 私が知っていた紫陽花のものではなく、 七月らしい海の絵に――…… 「七月!?」 わたしは愕然とする。 隣に貼られた時間割や 行事表と照らし合わせてみれば 今日は七月の四日。 「そんな……まだ六月のはずじゃないの……!?」 わたしの記憶では カレンダーはまだ 六月に入ったばっかりのはずだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加